ブログどす
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いただきものヒャッハー
「風間仁」
一八に呼ばれ、仁はいやいや振り向いた。
内心では驚いてもいる。
一八にこうしてあらたまって呼ばれるとなんとなく、おもはゆいところがあった。
しぶしぶ、いやいや、そういう顔で仁は振り返る。
「何だ」
「嫁に行く」
仁は地獄を見た。
地獄と言っても、一八が実際見たようなもえさかる火山の灼熱地獄ではない。
ただ単に自分を子と認めない父親が、花嫁衣装に身を包んでいるというだけのことである。
花嫁衣装に。
五十を目前にした、立派な体躯の男が身体のラインもあらわなドレスにきっちりと身を包んでいる。
繊細なレースをふんだんに使ったしとやかなヴェールがフンと吐き出した一八の息に翻る。
筋肉のついた太い腿と硬い尻でタイトなつくりのスカートがみっちりとラインを窮屈にしていた。
むき出しの肩や腕にはアクセサリーのように傷跡が紅を添えている。
ああもしかしたらあの白スーツは予行練習みたいなものなのかな、
悪夢だ、
仁は悪夢を見ている、
「あくむだ」
仁がつぶやく。
一八がいらだったように立派なピンヒールで地面をにじった。
「おい、聞いているのか」
しかも相手は熊だった。
リアルベアーではないものの、中年無職の熊だった。
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