ブログどす
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一八様は悪魔を得ました
そうして老いも飢えも眠りも忘れました
本当は怒りも悲しみも忘れるところだったのですが
それは一八様をかたちづくる大事なものだったのでそのままとなりました
一八様は悪魔を得て、かける事の無い望月となりました
そう、自分では思っていました
仁は一八様をあわれみました
一八様はすべてを手に入れたようで、全てを失ったのです
誰も一八様より長生きをせず死んでいきます
一八様の憎しみのみなもとである平八ですら死ぬでしょう
誰もが驚く長生きをしたとしても死ぬでしょう
飢えを忘れた一八様は、暑い日に飲む冷たい水を忘れました
一八様は悪魔を得て、かける事の無い望月となったのではありません、
何も無くただ闇に満たされた新月となったのです
それも、また満ちる事の無い新月です
なによりそれをわかっていない一八様がいっそうおろかであわれでした
時をかさねるうち怒りがおき火になりました
炎とていつまでも燃え盛ってはいられないのです
いつしか仁はふかくふかく一八様をあわれみました
「それでも俺がいるだろう」
仁もまた悪魔を得ています
たとい望まぬとしても悪魔は仁から死を拭い去ります
だから仁は一八様とおなじだけ生きて、おなじだけ孤独でしょう
それは一八様の孤独をいやすかどうかはわかりませんが、
そうなれば自分も少しは救われるだろうかと仁はうつらうつらと考えています
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