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そして全ては彼の手に





一八は勝者となった。それが激闘だったのか、最後の一撃がどうであったのか、倒れた彼らの死に様はどうだったのか、一八は李にただ一言、
「倒した」
としか言わなかった。
昔自分がしたように、昔自分がされたように、そのどちらにも当てはまらずただ倒したとだけ一八は呟いた。
言うべき事は言ったとばかりに唇はとざされ、視線は壁の白さへ吸い寄せられるように固定される。
一八がまばたく。
しばらく壁の方を見つめていたために渇いた眼球に瞼がひっかかって、それはひどくのろのろとしたまばたきだった。李はもう何も聞く事は無いだろうと割り切って、
「おめでとう一八、これで貴様は全てを手に入れたのだな?」
普段通りの、含みをあえてくどく見せる物言いでそう李が言ってやると、
「……ああ、」
普段の気丈な眉を張り損ねた、間抜けと言ってもいい顔で一八は李にようやく気づいたようだった。今の今まで交わしていた会話すら意識の蚊帳の外にあるようで、
「……うん」
幼い頃、まだ二人が額同士をくっつけて笑う事のあった日のような、あの時の意地張り以外のへだたりなき二人のような。
その返答に李は毒気を抜かれて、
「おやすみ」
それ以上言葉を連ねるよりずっと正直に、今はただお休みと李は呟いた。
返事は無かった、けれど気配で、一八が頷いたのがわかる。

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