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どっかへ行ってくれ、
どっかへ行ってくれ、
俺の目に触れないところへ。
お前が居なければ俺はただの人で居られるんだ。


哀願のような仁の恨み言を、一八はただせせら笑った。
仁は真面目で、また自分の身の程をわきまえているから、一八が目の届かないところで何をしようと、それは自分の領分外だと思っていた。
優しい気性の現れてでもある。


お前が目の前から消えさえすれば、
そうすればお前を殺さずともいい、
お前を殺さずに済むほうがいい、
だからどっかへ行ってくれと仁は身を投げ出さんばかりに、熱を込めて言った。
雑じり気のない真実と、嘘偽りない愛情を仁は重ねる。


「――思い上がるな」
針のように鋭い声で、一八は一言仁を貫いた。
仁が澄みきった眼差しをしているのを見て、今までで一番、そう初めて対峙した時よりも強く、まっさらな、ひらめくような激しい怒りを声を滲ませて、

「……思い上がるな」
もう一度言った。


「だけど、そしたら…」
俺はお前を殺さなきゃ、そう続けかけた仁に一八は背を向けた。
伸びた背筋は仁を威圧し、また拒絶した。

「―――貴様には失望した」

仁からしてみればこの上なく身勝手な、そして意外な言葉を投げ去って行く。


俺を望んだ事なんか無いくせに、
呟いてみて仁は初めて、どういう形にせよ一八に望まれていた事実だけが浮かび上がる。

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